獣のように①
「獣のように① 」
映画が終わって、外に出た。
「腹、減ったな~」
彼は大声で言う。
「おいしいパスタを食べさせてくれる店が近くにあるんだけど、行く?」
みさとは微笑みながら、彼に言った。
「パスタかあ・・・大盛はあるのかな?」
彼の言葉に、みさとは思わず吹き出した。
みさとたちは歩きはじめた。今日は自然と彼の腕をとることが出来た。五回目のデートにして、初めて・・・・。
それまでは彼のシャツの袖をつまんで歩くのがやっとだった。ようやく、ふたりの間から、ぎこちなさがとれつつある・・・・。その実感がみさとの気持ちを幸福なものにした。
一ヶ月まえのある寒い夜。ある書店で、以前から欲しかった翻訳ミステリーを見つけて手を伸ばすと、横に立っていた男性も同時に手を伸ばしてきた。
「失礼」
そう言って彼は手を引っ込める。
「あ、いいんです、みさと、別の本屋さんで探しますから。どうぞ」
みさとはあわてて言った。
「いや、そういうわけにはいきません」
そう言って彼は固辞する。しばらく、押し問答がつづいた。
「じゃあ、こうしよう」
彼はひとつの提案をした。
「僕が、買います。そして、一晩で読んだあと、あなたに進呈します」
みさとはつい、同意してしまった。彼の笑顔に引き込まれてしまっていたから・・・・。
訊いてみると彼は二十一歳。みさとと同じだった。つらい恋の終わりを経験した直後だっただけに、彼のなにもかもが、みさとにとって眩しく見えた。
彼もみさとと同じような時期だったらしい。おずおずと交際を申し込んできた。断る理由など、みさとにあるわけがない。
彼と腕を組み、しばらく歩く間、みさとは幸福感に酔いしれていた。このひとを、この腕を、みさとは絶対に離さない・・・どんなことがあろうとも・・・。
食事が終わって・・・しばらく黙って、みさとたちは歩いた。なんとなく、彼の緊張が伝わってくる。
そろそろ今夜あたりかな?という予感があって、みさとは新しい下着を身に着けていた。
池袋駅の横にある踏み切りを渡り、しばらく歩くと、ラブホテルが五、六軒固まった界隈にさしかかる。
彼はその一軒の前に立ち止まって、みさとの目を見た。
「いいだろう?」
燃えるような目が、そう言っている。みさとは小さく、うなずいた。
ホテルの部屋のドアを開けて、まだ、ベッドまで行かないうちに、みさとは抱きすくめられ、唇を奪われた。
長い、長いキスのあいだ、彼の口中で吸われ続けていたみさとの舌は、しびれたようになっている。お風呂に入りたかったが、彼の強引な手はみさとを離さない。
「ね、待って、待ってよ」
小さく抗ったが、彼は容赦なくみさとの衣服を、一枚、一枚、むしりとる。
この間までつきあっていた、妻子ある男とは、正反対だ。あのひとはみさとを、いつもこわれもののように扱ってくれた。自分よりも、まず、みさとの欲求が満たされることを優先してくれた。
しかし、今度の彼は違う。自分の欲求がすべてだと言わんばかりに、みさとを乱暴に扱う。
少しの恐怖と・・・そして、ある意味、新鮮な刺激を覚え、みさとのあそこが、すぐに濡れはじめるのがわかる。
つづく
映画が終わって、外に出た。
「腹、減ったな~」
彼は大声で言う。
「おいしいパスタを食べさせてくれる店が近くにあるんだけど、行く?」
みさとは微笑みながら、彼に言った。
「パスタかあ・・・大盛はあるのかな?」
彼の言葉に、みさとは思わず吹き出した。
みさとたちは歩きはじめた。今日は自然と彼の腕をとることが出来た。五回目のデートにして、初めて・・・・。
それまでは彼のシャツの袖をつまんで歩くのがやっとだった。ようやく、ふたりの間から、ぎこちなさがとれつつある・・・・。その実感がみさとの気持ちを幸福なものにした。
一ヶ月まえのある寒い夜。ある書店で、以前から欲しかった翻訳ミステリーを見つけて手を伸ばすと、横に立っていた男性も同時に手を伸ばしてきた。
「失礼」
そう言って彼は手を引っ込める。
「あ、いいんです、みさと、別の本屋さんで探しますから。どうぞ」
みさとはあわてて言った。
「いや、そういうわけにはいきません」
そう言って彼は固辞する。しばらく、押し問答がつづいた。
「じゃあ、こうしよう」
彼はひとつの提案をした。
「僕が、買います。そして、一晩で読んだあと、あなたに進呈します」
みさとはつい、同意してしまった。彼の笑顔に引き込まれてしまっていたから・・・・。
訊いてみると彼は二十一歳。みさとと同じだった。つらい恋の終わりを経験した直後だっただけに、彼のなにもかもが、みさとにとって眩しく見えた。
彼もみさとと同じような時期だったらしい。おずおずと交際を申し込んできた。断る理由など、みさとにあるわけがない。
彼と腕を組み、しばらく歩く間、みさとは幸福感に酔いしれていた。このひとを、この腕を、みさとは絶対に離さない・・・どんなことがあろうとも・・・。
食事が終わって・・・しばらく黙って、みさとたちは歩いた。なんとなく、彼の緊張が伝わってくる。
そろそろ今夜あたりかな?という予感があって、みさとは新しい下着を身に着けていた。
池袋駅の横にある踏み切りを渡り、しばらく歩くと、ラブホテルが五、六軒固まった界隈にさしかかる。
彼はその一軒の前に立ち止まって、みさとの目を見た。
「いいだろう?」
燃えるような目が、そう言っている。みさとは小さく、うなずいた。
ホテルの部屋のドアを開けて、まだ、ベッドまで行かないうちに、みさとは抱きすくめられ、唇を奪われた。
長い、長いキスのあいだ、彼の口中で吸われ続けていたみさとの舌は、しびれたようになっている。お風呂に入りたかったが、彼の強引な手はみさとを離さない。
「ね、待って、待ってよ」
小さく抗ったが、彼は容赦なくみさとの衣服を、一枚、一枚、むしりとる。
この間までつきあっていた、妻子ある男とは、正反対だ。あのひとはみさとを、いつもこわれもののように扱ってくれた。自分よりも、まず、みさとの欲求が満たされることを優先してくれた。
しかし、今度の彼は違う。自分の欲求がすべてだと言わんばかりに、みさとを乱暴に扱う。
少しの恐怖と・・・そして、ある意味、新鮮な刺激を覚え、みさとのあそこが、すぐに濡れはじめるのがわかる。
つづく