獣のように②
「獣のように②」
ドアからベッドまで続く、わずかな長さの通路で、素っ裸のみさとは、四つん這いにさせられた。
そして、尻の両端を掴まれたと思うと、いきなり、熱い塊が、みさとの中に殺到した。ぶちゅっと、いやらしい音がひびく。
キリのように鋭い快感に貫かれたみさとは、思わず、獣のように咆哮した。そして、すさまじい突きが、ものすごい速さで、みさとのあそこを襲う。
セックスに伴う、情感だとか、男女の心の機微だとか、遊び心とか、そんなものとは、完全に無縁だった。
問答無用の、動物的な「生殖」というほかにない行為が、そこにあった。
一分も経たないうちに最初の波がきた。
「あ、いいいい。いいいいいっく・・・いくっ!」
みさとがはしたない声を発して全身の力を抜いて倒れこんだので、彼はみさとを表にして、両足の間に割って入った。
ふたたび、熱く硬いものが、今度は前から、みさとの中にぶちこまれる。
そして、彼は狂ったように腰を撓わせた。
行為のあとに、のどの痛みを覚えるほど、みさとは叫びつづけていたらしい。彼はなかなか果てず、みさとは数え切れないほど、いってしまった。
何度か、首を絞められた。その度に意識は薄れたが、苦しさを伴う快感はすさまじかった。ようやく、彼がうめきはじめ、短く何事かを叫んでみさとの中に放出した。同時にみさとも、全身をふるわせて、最大のエクスタシーを享受していた。
帰りのタクシーの中で、彼はみさとの肩に手をまわして、ときどき、長い髪を愛撫している。
彼の体に凭れながら、行為中と、そうではないときの、あまりの彼の違いに、みさとは戸惑っていた。
しかし、激しい行為がもたらした快感はすさまじかった。
(離れられなくなりそう・・・)
その予感が、みさとをおののかせた。みさとは彼に気づかれないように、首筋を撫でる。絞められた記憶が、気になっていた。
それから数日経って・・・。彼からの食事の誘いがあった。それを心待ちにしていた自分が恥ずかしかったけど、みさとはいそいそと出かけた。
食事を終え、駅前の雑踏のなかを、みさとたちは歩いていた。足はしぜんと、この間のラブホに向かっている。
すると、向こうから歩いてくる人々の中の、ひとりの女性から、すれ違う寸前に声をかけられた。
「あら、懐かしい!」
よく見るとそのひとは、高校時代の先輩だった。テニスのサークルで一緒だった。
みさとはあわてて彼の腕を離し、挨拶せざるを得なかった。
「本当に、お久しぶりです」
「そうね。」
彼女はそう言ったあと、彼を見た。
「彼氏?」
「あ・・そ、そうです」
みさとは赤くなってそう言った。考えてみれば、知人に彼を紹介するのは初めてだった。顔が火照ってくる。
彼は「よろしく」と言って、ぴょこんと頭を下げた。
彼女はなぜか、しばらく彼を凝視していた。顔が少し、蒼ざめている。そして、みさとに言った。
「あなたの携帯の番号、教えてくれない?」
みさとはいぶかしく思いながら、番号を交換した。
彼女から電話があったのはその日の深夜だった。みさとは自分の部屋にいた。
「あなた、みさとには見えないものが見える能力があるって言ったこと憶えてる?」
いきなり、彼女はそんなことを言う。
「憶えています。それで有名だったんですもの」
みさとは答えた。不安がじわじわ、足元から這い登ってくる。
「こんなことを言うのはどうかと迷ったんだけど、あなたの身が危険だから、言わなくてはならないと思ったの。彼との交際は、やめた方がいいわ」
「ど、どういうことなの?」
心臓が高鳴りはじめる。
「彼には、同伴者がいる。しかも、性質の悪い・・というより、最悪の同伴者が」
「・・・・・・・・。」
みさとは声も出ない。
「あのとき、見えたの。髪の長い、若い女だったわ。真っ赤な服を着ていた。腰から下はなく・・・。どういうわけか、眼がなかった。すさまじい、恨みの念を放っていたわ」
電話を持つ手がぶるぶる震えはじめた。
「彼女は・・・彼から、殺されている。ふたりで、不道徳で自虐的なセックスに長い間ふけっていて・・」
彼女の声もふるえた。
「その最中に彼女だけ死んでしまったの」
「う・・・嘘よ。嘘でしょ?」
みさとはそう言いながら、首筋に手をやる。さっきも絞められたのだ。
「彼はたくみに死体を隠して、追及をまぬがれているの」
彼女はそこで息をのんだ。
「彼はね・・。人間じゃないわ。生身は人間かもしれないけど、彼を支配しているのは、彼ではない、邪悪な何かだわ。そして、死んだ女の、すさまじい恨みと執着の念があなたに向かっている。ね、このままではあなた、とり殺されてしまう。ね、どうしたの?今、ひとりなの?すぐに彼から逃げるのよ!」
みさとは携帯を落とした。そして、震えながら、うしろを振り返った。そこには彼がいた。素っ裸になって、みさとのほうに歩み寄ってきている。
陰茎が怒張していきおいよく痙攣している。彼の背後に目を向けると・・・。その薄暗い空間に、赤いものがぼんやり浮かんでいる。
それが、だんだんとはっきり、女の実像を結びはじめた。
おわり
みさとの創作意欲が高まりますので日記がおもしろかった時は下の拍手をお願いいたします。
ドアからベッドまで続く、わずかな長さの通路で、素っ裸のみさとは、四つん這いにさせられた。
そして、尻の両端を掴まれたと思うと、いきなり、熱い塊が、みさとの中に殺到した。ぶちゅっと、いやらしい音がひびく。
キリのように鋭い快感に貫かれたみさとは、思わず、獣のように咆哮した。そして、すさまじい突きが、ものすごい速さで、みさとのあそこを襲う。
セックスに伴う、情感だとか、男女の心の機微だとか、遊び心とか、そんなものとは、完全に無縁だった。
問答無用の、動物的な「生殖」というほかにない行為が、そこにあった。
一分も経たないうちに最初の波がきた。
「あ、いいいい。いいいいいっく・・・いくっ!」
みさとがはしたない声を発して全身の力を抜いて倒れこんだので、彼はみさとを表にして、両足の間に割って入った。
ふたたび、熱く硬いものが、今度は前から、みさとの中にぶちこまれる。
そして、彼は狂ったように腰を撓わせた。
行為のあとに、のどの痛みを覚えるほど、みさとは叫びつづけていたらしい。彼はなかなか果てず、みさとは数え切れないほど、いってしまった。
何度か、首を絞められた。その度に意識は薄れたが、苦しさを伴う快感はすさまじかった。ようやく、彼がうめきはじめ、短く何事かを叫んでみさとの中に放出した。同時にみさとも、全身をふるわせて、最大のエクスタシーを享受していた。
帰りのタクシーの中で、彼はみさとの肩に手をまわして、ときどき、長い髪を愛撫している。
彼の体に凭れながら、行為中と、そうではないときの、あまりの彼の違いに、みさとは戸惑っていた。
しかし、激しい行為がもたらした快感はすさまじかった。
(離れられなくなりそう・・・)
その予感が、みさとをおののかせた。みさとは彼に気づかれないように、首筋を撫でる。絞められた記憶が、気になっていた。
それから数日経って・・・。彼からの食事の誘いがあった。それを心待ちにしていた自分が恥ずかしかったけど、みさとはいそいそと出かけた。
食事を終え、駅前の雑踏のなかを、みさとたちは歩いていた。足はしぜんと、この間のラブホに向かっている。
すると、向こうから歩いてくる人々の中の、ひとりの女性から、すれ違う寸前に声をかけられた。
「あら、懐かしい!」
よく見るとそのひとは、高校時代の先輩だった。テニスのサークルで一緒だった。
みさとはあわてて彼の腕を離し、挨拶せざるを得なかった。
「本当に、お久しぶりです」
「そうね。」
彼女はそう言ったあと、彼を見た。
「彼氏?」
「あ・・そ、そうです」
みさとは赤くなってそう言った。考えてみれば、知人に彼を紹介するのは初めてだった。顔が火照ってくる。
彼は「よろしく」と言って、ぴょこんと頭を下げた。
彼女はなぜか、しばらく彼を凝視していた。顔が少し、蒼ざめている。そして、みさとに言った。
「あなたの携帯の番号、教えてくれない?」
みさとはいぶかしく思いながら、番号を交換した。
彼女から電話があったのはその日の深夜だった。みさとは自分の部屋にいた。
「あなた、みさとには見えないものが見える能力があるって言ったこと憶えてる?」
いきなり、彼女はそんなことを言う。
「憶えています。それで有名だったんですもの」
みさとは答えた。不安がじわじわ、足元から這い登ってくる。
「こんなことを言うのはどうかと迷ったんだけど、あなたの身が危険だから、言わなくてはならないと思ったの。彼との交際は、やめた方がいいわ」
「ど、どういうことなの?」
心臓が高鳴りはじめる。
「彼には、同伴者がいる。しかも、性質の悪い・・というより、最悪の同伴者が」
「・・・・・・・・。」
みさとは声も出ない。
「あのとき、見えたの。髪の長い、若い女だったわ。真っ赤な服を着ていた。腰から下はなく・・・。どういうわけか、眼がなかった。すさまじい、恨みの念を放っていたわ」
電話を持つ手がぶるぶる震えはじめた。
「彼女は・・・彼から、殺されている。ふたりで、不道徳で自虐的なセックスに長い間ふけっていて・・」
彼女の声もふるえた。
「その最中に彼女だけ死んでしまったの」
「う・・・嘘よ。嘘でしょ?」
みさとはそう言いながら、首筋に手をやる。さっきも絞められたのだ。
「彼はたくみに死体を隠して、追及をまぬがれているの」
彼女はそこで息をのんだ。
「彼はね・・。人間じゃないわ。生身は人間かもしれないけど、彼を支配しているのは、彼ではない、邪悪な何かだわ。そして、死んだ女の、すさまじい恨みと執着の念があなたに向かっている。ね、このままではあなた、とり殺されてしまう。ね、どうしたの?今、ひとりなの?すぐに彼から逃げるのよ!」
みさとは携帯を落とした。そして、震えながら、うしろを振り返った。そこには彼がいた。素っ裸になって、みさとのほうに歩み寄ってきている。
陰茎が怒張していきおいよく痙攣している。彼の背後に目を向けると・・・。その薄暗い空間に、赤いものがぼんやり浮かんでいる。
それが、だんだんとはっきり、女の実像を結びはじめた。
おわり
みさとの創作意欲が高まりますので日記がおもしろかった時は下の拍手をお願いいたします。